接続詞というのは文と文、あるいは段落と段落をつなぐ役割をする言葉。「そして」「しかし」「また」「だが」といった言葉です。接続詞と同じような働きをするものを接続語と呼んだりします。「一方」「それによって」「なぜならば」「加えて」といった言葉です。いずれもだいたい文の先頭で使われることが多いようです。
適切な接続詞や接続語を使うことによって、文の流れがよくなり、文の意味がわかりやすくなります。わかりやすい文章を書くための重要なポイントの一つです。
ただし、実は接続詞・接続語の選択は簡単ではありません。
(例文1)次の( )に入る適切な接続詞あるいは接続語を考えてみましょう。
太郎はラーメンを食べた。( )、次郎はカレーを食べた。
さて、( )には何を入れるのがいいでしょうか。
答えは、「多くの言葉が入る可能性がある」です。
太郎はラーメンを食べた。(そして)、次郎はカレーを食べた。
太郎はラーメンを食べた。(しかし)、次郎はカレーを食べた。
太郎はラーメンを食べた。(また)、次郎はカレーを食べた。
どれもあり得ます。
つまり、これだけの文章では、どんな接続語・接続詞が適切なのかは判断できません。
この文章の前後にどんな文章があるか、それを読んで判断する必要があります。
(例文2)
父親は太郎と次郎に、昼食には必ずラーメンを食べるように
命令していた。太郎はラーメンを食べた。( )、次郎はカ
レーを食べた。
この場合はどうでしょう。例文1の時と比べると、入る言葉がやや限定されてきそうです。例えば、「しかし」だといいのではないでしょうか。ここでは、太郎と次郎の対比、特に次郎が父親の命令に逆らっている様子を示すのがいいのではないかと思われるからです。
このように、どんな接続詞・接続語を使うべきかは、全体の流れの中で判断しなければなりません。
それでも、この接続詞・接続語選びは簡単ではありません。上の例文2でも、「そして」を入れて絶対に間違いとも言えません。特にこうした小説風の文章の場合は、小説の作者のクセや思い入れによって、使われる接続詞や接続語が変わってきます。
ただ、もっと実務的あるいは学術的な文書の場合、例えば、会社での報告書や学校でのレポートなどの場合は、どの接続詞・接続語を使うべきかは、もう少し明確かもしれません。実務的・学術的な文書の場合は、小説などよりも、論理性が大事になるからです。
接続詞・接続語を正しく使うにはいくつかのポイントがありますが、今回はその中でも特に重要と思われる2つの点を以下に挙げます。
●順接と逆接を間違わない。
順接の接続詞・接続語は、「そのため」「よって」「したがって」など。前の事柄が原因や理由になって、次の事柄が起こる場合に使います。
(例文3)
大雨が降った。よって大会は中止になった。
逆接の接続詞・接続語は、「しかし」「それでも」「にもかかわらず」など。前の事柄から予測されるものとは逆の結果が示される場合に使います。
(例文4)
大雨が降った。しかし大会は決行された。
この順接と逆接を間違わないようにしましょう。簡単なようですが、内容が込み入った文章になると、順接と逆接を間違って、正しくない接続詞を使ってしまったりします。
●接続詞・接続語を入れなくてもいい場合も多い。
接続詞や接続語は文章の流れをわかりやすくするために大事なものだと書きましたが、逆に、入れ過ぎてわかりにくくなるケースもあります。文章を書き終わったら読み直してみて、本当にその接続詞・接続語が必要なのか、じっくり検討してみましょう。削除した方がすっきりしてわかりやすい場合もあります。
(例文5)
今回の体験型イベントでは、参加者は自由に機器に
触れることができる。また、身分証明証があれば、借
り出しもできる。そして、使用後に感想を提出すれば、
その機器を安価に購入することもできる。
この例文5の中の「また」「そして」という接続詞を削ってみます。
(例文6)
今回の体験型イベントでは、参加者は自由に機器に
触れることができる。身分証明証があれば、借り出し
もできる。使用後に感想を提出すれば、その機器を安
価に購入することもできる。
接続詞がなくなりましたが、問題ありません。これは、この文章に含まれる3つの文が、同じような意味・役割・構造を持った文であるため、特にそれらを接続詞などでつながなくても流れが理解できるからです。
このように、接続詞や接続語が無くてもいい、あるいは無い方がいい場合もありますので、やはりよく読み直して検討することが大事です(例文5も間違いではありません。例文6よりも例文5の方が好きだという人もいるかもしれません。あくまで、接続詞は絶対必要なものではないという例です)。
■まとめ 接続詞・接続語の選択は意外と難しい。入れない方がいい場合もけっこう多い。 |