主語・述語:1文の中に複数の動詞がある場合 その2

1つの文の中に複数の動詞がある場合に注意すべきこと。その2です。とはいえ、内容は前回とほぼ同じです。

 

(例文1)あまりよろしくない文。

 

 体験型イベントは、商品やサービスの有効な宣伝で

あるだけではなく、企業の広報としての役割も大きい。

情報を押し付けるのではなく消費者からもアプローチ

してもらい身をもって知ることに大きな意義があるの

ではないか。

 

さっと読むとそれほど変な感じはしないかもしれません。この文章が言いたいこともわかるような気がします。でも細かく見ると、やはり、ちょっと違和感がある部分があります。

 

後半の文には、「情報を押し付ける」「アプローチしてもらい」「身をもって知る」と、動作を述べる語句が3つあります。

それぞれの「動作の主」(いわゆる主語的なもの)を考えてみます。

 

「情報を押し付ける」のは企業です。「アプローチしてもらい」は、「アプローチする」のは消費者ですが、「〜してもらう」という形になっており、この場合「アプローチしてもらう」のは、企業の方です。「(企業が)(消費者に)アプローチしてもらう」ということですね。だから動作の主は企業と考えていいでしょう。さて、次の「身をもって知る」の動作の主は何でしょうか。全体の意味から推測すると消費者だと考えられます。「(企業が)身をもって知る」ともとれなくはないですが、恐らく、この文章の筆者の言いたいこととは違うと思われます。

 

つまり、この後半の文に違和感があるのは、動作の主がはっきりと書かれていない1つの文の中に、動作主が異なる、動作の記述(いわゆる述語的なもの)が入り交じっているからなのです。

 

企業 → 「情報を押し付ける」

企業 → 「アプローチしてもらう」

?? → 「身をもって知る」

 

じゃあ、どのように書けばいいのか。

 

(例文2。例文1の修正例①)

 

 体験型イベントは、商品やサービスの有効な宣伝で

あるだけではなく、企業の広報としての役割も大きい。

情報を押し付けるのではなく消費者からもアプローチ

してもらい身をもって知ってもらうことに大きな意義

があるのではないか。

 

(例文3。例文1の修正例②)

 体験型イベントは、商品やサービスの有効な宣伝で

あるだけではなく、企業の広報としての役割も大きい。

企業が情報を押し付けるのではなく消費者からもアプ

ローチしてもらい、消費者が身をもって知ることに大

きな意義があるのではないか。

 

(例文2)と(例文3)は、(例文1)を書き直してみたものです。

 

(例文2)では、(例文1)の「身をもって知ること」を「身をもって知ってもらうこと」と、受け身の言い方に変えました。こうすれば「知ってもらう」のは企業ですから、「情報を押し付ける」「アプローチしてもらい」「知ってもらう」の動作主は3つとも企業となり、主語と述語がうまく対応せずに文がねじれているような違和感はなくなります。

 

一方、(例文3)は、「身をもって知る」はそのままで、「情報を押し付ける」の主語である「企業」と、「身をもって知る」の主語である「消費者」を追加したものです。主語を追加することで、述語との関係を明確にしています。

 

もっとも、だからといって「文章がとても良くなった」とは言えないのが難しいところです。

(例文2)では、「アプローチしてもらい身をもって知ってもらう」の部分が、なんだか重たいというか、リズムが悪くなったような感じもします。

(例文3)では、主語と述語の関係が明確になったとはいえ、企業やら消費者やらが、短い文の中に何回も出てきて、ちょっとうるさい感じです。

 

一つの違和感がある部分を修正すると、別の違和感が出てくるというのが何とも悩ましいところ。一つの部分をあれやこれや考えているうちに、最終的には、全部書き直した方がいいのでは、ということもしばしば起こります。

 

ただ、(例文1)と、(例文2)(例文3)では、もしかしたら(例文2)や(例文3)の方がまだるっこしい感じがするかもしれないけれども、読み手が意味を理解しやすいかどうかという点においては、(例文1)よりも(例文2)(例文3)の方がいいのだということを覚えておいてほしいと思います。

 

 

*補足

英語では一つの文の中にほぼ必ず主語がありますが、日本語では主語が書かれていないことも普通です。これは日本語の便利な面でもあり、また逆に、よく意味のわからない文章ができあがってしまう原因でもあります。

■まとめ

1文の中に複数の動作がある場合は「動作主を統一」あるいは「主語を明確化」。