前回、「背景」という言葉を取り上げました。
今回の「理由」は、やはり使い方が少々難しいのですが、「背景」より登場頻度が高いように思われます。
今回も、実際どのように使われているか、Googleで検索してみました。
以下、Googleで見つけてきた文を一部改変したりして掲載しています。
“その理由は〜”
Googleで検索すると、一番目に付くのは、タイトルなどで「○○が大ピンチ!その理由は?」という風に、クエスチョンマークを付けて、これだけで終わっているものです。もっと長い文になっているものを探すと。。。
(例文1)
「このホテルはとても快適に過ごせます。その理由は、全室にエアコンがあるためです。」
(例文2)
「このホテルでは非常に快適に過ごせる。その理由は、全室にエアコンがあるからだ。」
(例文1)(例文2)のように、「その理由は〜ためです。」「その理由は〜からだ。」と、「〜ため」「〜から」という言葉に行き着く例が多く見られます。
(例文1)も(例文2)も間違いではないようです。でも、ちょっと待ってください。(例文1)も(例文2)も、「その理由は」を削除してしまっても大丈夫、いや、そっちの方が簡潔でいいのではないでしょうか。
(例文3。例文1の「その理由は」を削除したもの)
「このホテルはとても快適に過ごせます。全室にエアコンがあるためです。」
(例文4。例文2の「その理由は」を削除したもの)
「このホテルでは非常に快適に過ごせる。全室にエアコンがあるからだ。」
(例文1)(例文2)よりも、(例文3)(例文4)の方がよさそうです。文末の「ため」「から」という言葉自体が、理由を説明する意味合いを持っているから、わざわざ「その理由は」という言葉はいらないのかもしれません。
(例文5)
「アドバン塾にはクラスのない日にも来校される方が大勢。 その理由は「自習室」が完備されているからなんです。」
この(例文5)の場合、上と同じように「その理由は」が無くてもOKのようですが、あった方が前の文とのつながりがいくぶんわかりやすい感じがします。
(例文3)と(例文4)では、前の文の最後が「〜できる」(「快適に過ごせる」)という風に可能性を表わしているため、次の文の最初に「その理由は」という言葉がなくても、次の文にはその可能性の理由を説明する内容が来るのではないかと予測できるからかもしれません。
一方で、(例文5)の方は、最初の文は「〜できる」という意味ではなく、状況を表しているだけです。だからその次の文に「その理由は」とあった方が、つながりがわかりやすくなるのではないでしょうか。
まとめてみますと、
★「その理由は」で始まる文の最後の方には、「〜ため」「〜から」といった言葉が来ることが多い。
★ただし、「その理由は」で始まる文の中には、「その理由は」が不要なものも少なくない。
他の使い方としては、
(例文6)
「このホテルでは非常に快適に過ごせる。その理由は設計にある。」
これは、「その理由は(名詞あるいは名詞的な言葉)にある。」というパターンです。
この場合は「その理由は」は省略できません。
(例文7)
「このホテルでは非常に快適に過ごせる。その理由は、全室に取り付けられた高性能エアコンだ。」
これは、「その理由は(名詞あるいは名詞的な言葉)だ。」というパターンです。しかし、(例文7)の場合、使い方として大丈夫かちょっと微妙。「その理由は」ではなく、「その秘密は」なら問題無いように思えます。
どうも、(例文6)のパターンも(例文7)のパターンも、間に入ってくる(名詞あるいは名詞的な言葉)が何かによって、大丈夫か大丈夫じゃないかが変わってきそうです。
(例文7)の場合も、
(例文8)
「このホテルでは非常に快適に過ごせる。その理由は、全室に取り付けられたエアコンの性能の高さだ。」と書き換えたらどうでしょう? あんまり変わらないかな?
★「その理由は〜にある。」「その理由は〜だ。」というパターンもよく使われる。
★ただし、入ってくる言葉によって違和感あるかないかが違う。
やはり、必要な時以外は、「その理由は」で始まる文章をなるべく書かないようにすることが、一番いいのかもしれません。
(例文7)および(例文8)のような書き方はやめてしまって、
(例文9)
「このホテルでは非常に快適に過ごせる。全室に性能の高いエアコンが取り付けられているからだ。」
あるいは、
「このホテルでは非常に快適に過ごせる。性能の高いエアコンが全室に取り付けられているからだ。」
といった書き方がいいのではないでしょうか。いずれも「その理由は」は入っていません。
例によってだんだんややこしくなってきましたが、なんとかもう一つ。
“その理由として〜”
(例文10)
「私は○○だと思う。その理由として、次の3点が挙げられる。一つ目は〜」
多く見かけるパターンです。この、「その理由として、次の●点が挙げられる。」という短い言い方は、大変わかりやすくてよいと思います。この後に、順番に理由を述べていきます。
次は、よくないと思われる例。
(例文11。よくない例)
「私の会社は離職率が高い。その理由として、残業が多く、休日出勤も多い。」
これは使い方のよくない例です(でも日本語として、ぎりぎりセーフか? 話し言葉ではOKでも、やはり書き言葉としてはよくないですね)。
(例文12。例文11の修正例)
「私の会社は離職率が高い。その理由として、残業の多さ、休日出勤の多さが挙げられる。」
(例文13。これも例文11の修正例。最後をちょっと変えました)
「私の会社は離職率が高い。その理由として、残業の多さ、休日出勤の多さが考えられる。」
★「その理由として」は、「〜が挙げられる。」「〜が考えられる。」などに落ち着くパターンが普通。
あるいは、「その理由として挙げられるのは、○○○○○だ。」「その理由として考えられるのは、○○○○○だ。」というように、順番が逆のパターンもあります。
(例文14。例文12の文の構造を変えたもの)
「私の会社は離職率が高い。その理由として挙げられるのが、残業や休日出勤の多さだ。」
「理由」の使い方にはまだまだいろいろなパターンがありますが、今回はこの辺りで。
■まとめ 「その理由は」「その理由としては」の正しい使い方のパターンを確認しよう。 |